君がいて、僕がいて 〜Vol1.日常が変わる時〜

第1話  =Side Yukino=

 

 

「おはよー、ゆき」
「おはよ。・・・何かテンション高くない?」
「え〜?だって、明日は何の日だと思ってるのよ」
「明日って・・・」 

今日は確か2月13日。
ってことは明日は2月14日。
14日って・・・・。 

「あーーーっ!!」 

私は思わず大声を上げてしまった。
・・・やばい、忘れてた。
毎年手作りして和哉と湊にはあげてたのに・・・。
仕方ない。
今日の帰りスーパー寄って材料買ってこなきゃ。 

「・・・ねぇ、ゆき」
「なに?」
「桐谷君にあげるの?」
「・・・あげる・・・けど」 

康子が意味深な目で私を見るから、ついしどろもどろになってしまう。 

「へぇ。でもさ、毎年かなり貰ってるでしょ?」
「う〜ん・・・。貰ってはいないよ、一つも」
「ええっ!?桐谷君が?」
「あ、でも断ってるってだけで・・・」 

そう。
湊は女の子からチョコを貰わない。
・・・私と歩は別として。
私も毎年2、3回見かけるけど、全部断ってた。
それに、家にチョコを持ってかえってきたことは一度もない。
私はいつもそれが不思議だ。
だって、湊はチョコは好きなハズ。
帰りにいっつも色んな種類のチョコを買っては食べてる。
それなのに、チョコを貰う絶好のチャンスのバレンタインには貰わないっておかしくない? 

「・・・桐谷君って他校の子からも渡されたりしてる?」
「うん。毎年帰る時間とかすごいたくさん来るもん。だから途中から別々に帰るよ」
「まぁ、あれだけ見てくれが良けりゃ誰でも寄ってくるわよね。普通は」 

湊は他校の子からも物凄く人気がある。
帰りの電車や、家の前で待ち伏せ。
あらゆる所に女の子がいるってカンジ。 

「ま、私はあんまり桐谷君には興味ないけどね。女房いるし」
「女房?」 

私が不思議そうに言うと、康子が私の鼻を突っつきながら言った。

「あんたよ、あんた!」
「な・・・っ、何バカなこと言ってるのよ!」
「はいはい。ま、せいぜい頑張ってね〜」 

康子はそれだけ言い残して席へ戻っていった。
・・・まったく。
みんなして、いい加減にしてほしいわよ。
私は湊のことなんかどうも思ってないもん。
・・・本当に。
関係ないっていってもみんな信じてくれない。
いや、関係ないわけじゃないんだけど・・・・。
って!!
何言ってんだろ、私。
ほっとげばいいのに、何でかそれができない。
まぁ、いいわよ。
チョコだけは渡すもんね。今までやってたことをいきなりやめるのもおかしいよ。
私は一人で無理矢理納得していた。

  

 

 

私は歩といっしょに買出しをして家に帰って。
和哉を追い出して私の家で作ることにした。
歩と一緒に家に入ろうとしたとき。
隣の家の前に二つの人影が見えた。

(・・・・・?)

暗くてよく見えない。
目を凝らしてみると、だんだんはっきりしてきた。
それは、湊と知らない女の子だった。
・・・ちょっと、告白には一日早いんじゃないの?
バレンタインは明日よ、明日。
その女の子は湊に迫っていくように見えた。
・・・・あー、もおっ!

「歩、行こう」
「え、あ・・・うん」

私は歩にそう言うと、さっさと家に入ってドアを思いっきり閉めてやった。
・・・なに、ピリピリしてんのよ。
湊なんてどーでもいいって、そう言ったはずだもん。
でも、胸がむかむかする。
気にしない。
気にすんな、雪野!
私は心配そうに見つめる歩の瞳にも気づかないで、自分を鼓舞した。

 

 

 

明日はセント・バレンタインデー
女の勝負の日
運命の分かれ道
きっと、貴女に最高の力をくれるでしょう

 

 

 

 

第2話

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